この記事では、お送りいたしますとは正しい表現なのか?また、お送りしますと送付致しますの意味と違いや使い分けについてわかりやすく解説します。
「お送りいたします」、「お送りします」、「送付致します」は、ビジネスシーンや公の場で頻繁に使用する言葉です。
社内の上司や社外のお客様、同僚などそれぞれ正しい表現があり、相手に与える印象も変わります。
書類などを送る場合などよく使う言葉なので、失礼がないよう意味や使い方を抑えておくと、いざという時に困らなくてすみます。
それぞれの言葉の意味や使い方について詳しくお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
「お送りいたします」とは
結論から言いますと、「お送りいたします」は正しい敬語表現です。
「お送りいたします」を品詞分解すると、謙譲語の「お」と動詞の「送る」、丁重語の「いたす」に丁寧語の「ます」となります。
謙譲語は、自分の動作を謙る(へりくだる)ことで、相手に対して敬意を示す敬語です。
そして、丁重語は、動作ではなく、話を聞いている相手に敬意を示すために使われる言葉で、例えると「昨日から妹の実家で勉強しております」の文章の「おります」は妹への敬意を示しているのではなく、この話を聞いている相手に敬意を示しているという形です。
「お送り致します」は正しくない
「お送りいたします」を「お送り致します」に変換しても問題はないと思われるかもしれませんが正しい表記ではありません。
補助動詞で使用する場合は、ひらがな表記「いたす」で使用します。そして、動詞として使用する場合は漢字表記「致す」で使用するというルールがあります。
したがって、「お送りいたします」の「いたす」は補助動詞で使用されているので、「お送り致します」とはなりません。
お送りいたしますの別の敬語表現
お送りいたしますは、前述で正しい敬語表現だとお伝えしました。しかし、謙譲語と丁重語が合わさった表現(二重敬語ではない)ですから、丁重語が謙譲語の仲間だと考え、使用することを避ける人もいます。
その場合は、「お送りします」を使用します。「お送りします」は謙譲語「お」と動詞「送る」、そして丁寧語の「ます」が合わさっている敬語表現です。
ですから、「お送りします」も「お送りいたします」と同じく敬語表現となるので、上司など目上の方に対してや、ビジネスシーンなど堅い場面でも使用することができます。
お送りいたしますの使い方
お送りいたしますは、ビジネスシーンで会話の最中やメッセージやメールの文中で頻繁に使用される表現です。
特に使用頻度が高い例が以下となります。
- お送りいたしますのでご確認ください
- お送りいたしますのでご査収ください
また、「ください:は「くださる」の命令形となるので、相手に強要するような意味合いが強くなります。
ですから、目上の人や社外の人には「ください」ではなく、「くださいますようお願い申し上げます」といったより丁寧な敬語表現を使うように心がけると良いでしょう。
- お送りいたしますのでご確認くださいますようお願い申し上げます
- お送りいたしますのでご査収くださいますようお願い申し上げます
「お送りします」とは
「お送りいたします」で説明した通り、「お送りします」という言い方も「送る」という行為に関する敬語表現です。
この表現は「送る」を丁寧に述べていますが、謙譲語の「お送りいたします」に比べると、相手に対する敬意のレベルは低いです。
「お送りします」の使い方
「お送りいたします」よりは、敬う度合いが低くなるため使い方としては、社内の事務的な連絡や、同僚やチームでのやり取りで使われます。
例えば、「その書類は明日お送りします」のようなかたちです。このようなシチュエーションの場合、「その書類は明日送ります」という言い方でも問題ではないですが、それでも「お送りします」などが適切だと言えます。
「送付致します」とは
「送付致します」という言葉を品詞分解すると、名詞「送付」と動詞の「致す」、そして丁寧語の「ます」となります。
「送付」とは、「文書や物品を相手に送り届ける」あるいは「送り渡す」を意味しています。「送付」は通常「〜する」と動詞を伴われて使います。
送付の「送」という文字は、「行く」と示すしんにょうと「両手で物を押し上げる」という形を表す文字から成り立っています。
これらの理由で「物を送る」という意味合いが生まれたとされています。
さらに、送付の「付」は、人を意味するにんべんと「寸」から成り立ちます。「寸」には「右手の手首に親指を当て、脈をはかる」行為を意味するとされています。
したがって、「付」は「人に手で物をつける」ことを表すようになったと考えられます。
また、「致します」は、「する」の謙譲語や丁寧語として用いられる言葉です。
謙譲語の場合
謙譲語の場合は、自分の行為や動作を謙る(へりくだる)ことで相手に対して敬意を表したり、あらたまった気持ちを込めるという意味を示すことで話の聞き手に対する敬意を表現することができます。
以下に謙譲語の用例を挙げます。
- この問題を早急に改善するため努力致します。
- この件に関して私からお話し致します。
丁寧語の場合
丁寧語の場合も謙譲語と同じく、相手に対する敬意を示すといった意味は基本的に同じです。一般的には「致します」の形で使用されます。
以下に丁寧語の用例を挙げます。
- いい香りが致しますね。
- この製品の値段は1万円ほど致します。
「送付致します」の意味
前述でお伝えした通り、「送付致します」は「送付」を謙る(へりくだる)ことで丁寧に述べているので、「送り届けさせていただきます」という意味合いとなります。
先ほどお伝えした「お送りします」という言い方と同義になるとも言えます。
ただし、「送付」という言葉にはやや堅いニュアンスとして相手に伝わることがあるので、「お送りします」のようにビジネスシーンで用いるときは少し気をつける必要があると言えます。
「送付致します」は失礼な敬語?
送付致しますは、失礼な敬語なのでしょうか。「送付」は漢語です。漢語とは昔、中国から伝わり日本語となった語であり、法律用語や商行為の事務用語として使用されています。
「送付」はやや堅い印象を与える
例えば、「証拠を調べるために必要な書類を検察庁に送付した」、「請求書を送付するので確認してください」といった表現です。
このように使用されるので「送付」はやや堅い言葉として事務的なニュアンスを相手に与えると言えます。
さらに「送付」は「送り付ける」という和語を省略したかたちであり、「送り付ける」は「相手の都合に関係なく、一方的に乱暴に物事を送る」という意味合いがあります。
例えば「脅迫状を送り付けられた」というような用例です。この用例からわかるように、「送り付ける」は冷徹に書類などを送り付けるといった印象に相手は受け取りがちです。
「送る」は敬語として述べる時に使用する
一方、「送る」には物理的な文書や品物など以外にも「合図を送る」や「月日を送る」のようなかたちで抽象的な表現にも使用されます。
ですから、何かの物品等を相手に送ることを敬語として述べる時に、一般的には「お送り致します」や「お送り申し上げます」という表現が相手に良い印象を与えるでしょう。
「送付致します」は間違いではない
送付致しますは敬語として使用できないことはありません。前述で堅い印象があるとお伝えしましたが、言葉の頭に「ご」を付けることにより、相手に謙る(へりくだる)ニュアンスを強め、堅い印象を弱めることができます。
また、他の方法を挙げると「致します」のほかに「申し上げます」や「させていただきます」などを用いると堅さがなくなり、相手に丁寧な印象が伝わる可能性が高まります。
普段の生活では「送付致します」と表現することはないでしょう。ですから、ビジネスシーンや公の場面でもし「送付致します」と用いる時には、このような微妙な意味合いや表現の違いを理解しておくと、シチュエーションに合わせて適切に使用することができます。