玉露は、日本茶の中でも最高級とされ、深い旨みと甘み、わずかな苦味が調和した、まろやかで濃厚な味わいが特徴です。歴史は古く、江戸時代には既に栽培されていました。今回は、玉露の特徴や美味しい淹れ方についてわかりやすく紹介します。
玉露とは
玉露(ぎょくろ)は、日本茶の中でも最高級品とされるお茶の1つです。茶葉の特殊な栽培方法によって、独特の味わいを持っています。茶摘みの20日前から、茶畑に遮光ネットを張って日光を遮断する「かぶせ茶」を行い、茶葉を軟弱にします。その後、摘んだ茶葉を直ちに加熱し、鮮度を保ったまま蒸して乾燥させます。そのため、香り高く、甘味や旨味が豊かで、苦みが少ないのが特徴です。
玉露は、茶葉を粉砕して飲む抹茶とは違い、茶葉を急須に入れて注いで飲むのが一般的です。淹れ方も独特で、まずはじめに急須に適量の茶葉を入れます。次に、70℃程度の温度にまで冷ましたお湯を入れ、約1分間蒸らしてから急須の注ぎ口から、茶碗に注ぎ分けます。2回目以降の注ぎは短く5秒程度で、徐々に茶葉の香りと旨味が増していくのを楽しめます。
玉露は、独特の茶葉の風味と、温度や蒸らし時間など、淹れ方によっても異なる味わいを楽しめるお茶です。高価なお茶として知られていますが、その価値は味わってみる価値があります。
玉露の名前の由来
「玉露」という名前は、製茶業者である山本山が商品名として使い始めたことが由来とされています。1835年、六代目の山本嘉兵衛(徳翁)が、宇治郷小倉の木下家で茶葉を丸く焙り、その形状が露玉に似ていたことから「玉露」と名付けました。現在では、茶葉を棒状に焙ることが一般的ですが、これは明治初期に製茶業者の辻利右衛門(辻利)によって改良されたものです。
玉露の主な生産地
玉露は、栽培に手間のかかるため、生産量が少なく、希少性が高いお茶です。そのため、栽培地は限られており、三大産地とされる京都の宇治・福岡の八女・静岡の岡部を中心とした、特定の地域でしか栽培されていません。全国の荒茶生産量に占める割合はわずか0.3%であり、その希少性から高い価格帯で取引されることが多いです。また、生産される量も限られているため、限られた人しか味わうことができない贅沢なお茶と言えるでしょう。
玉露の製法と特徴
玉露は、日本茶の中でも最高級とされる贅沢なお茶です。玉露の茶葉は、収穫前20日程度から被覆栽培を行い、日光を遮断して育てられます。これにより、茶葉の中で特有の成分であるアミノ酸が蓄積され、旨味成分のテアニンが増加します。そして、製茶工程では茶葉を発酵させずに、生のまま蒸して乾燥させます。この製法によって、玉露特有の深みのある香りと、濃厚な甘味が生まれます。
玉露は、その品質の高さから、一般的な煎茶とは異なる淹れ方が求められます。湯温を高めに保ち、短時間で淹れることが重要です。また、湯温に合わせてお茶の量や湯の量を調整し、いい茶葉と適切な湯量で淹れることが美味しい玉露を楽しむ秘訣です。
玉露の品種
玉露を作るために使用される茶樹の品種には、やぶきた、あさひ、ごこう、こまかけ、やまかい、さえみどり、おくみどりなどがあります。これらの品種は、それぞれの特徴や風味を持っており、玉露の品質に影響を与えます。
やぶきたは、茶葉の産地として有名な静岡県で栽培されている品種で、一般的には、やぶきたの玉露が最も高級な品質とされています。
- あさひは、やぶきたよりもやや渋みが強く、豊かな旨みがあります。
- ごこうは、やや鮮やかな色合いが特徴で、比較的さわやかな味わいがあります。
- こまかけは、煎茶や抹茶にも用いられる、比較的新しい品種です。
- やまかいは、やや渋味があり、個性的な味わいがあるとされています。
- さえみどりは、豊かな香りが特徴で、口当たりが滑らかでまろやかな味わいがあります。
- おくみどりは、山口県で栽培されている品種で、独特の苦味と旨味があるとされています。
これらの品種は、玉露の味わいや香りを決定づける重要な要素の一つであり、それぞれの特徴を活かしたブレンドによって、様々な玉露の味わいが生み出されます。
玉露とかぶせ茶との違い
玉露と同様に被覆栽培で作られるお茶に「かぶせ茶」があります。かぶせ茶は玉露と異なり、遮光期間が茶摘み前約1週間から10日前後と短く、一般的には遮光率が50%前後になります。一方、玉露は遮光期間が早ければ新芽が出始めたら、もしくは茶摘の約3週間前から始まり、遮光率ははじめ70%で茶摘み前には90%以上になります。
かぶせ茶は、煎茶と玉露の中間的な味わいを持つとされています。煎茶の味わいを感じながら、玉露特有の覆い香も味わえるため、煎茶よりも上品な風味が楽しめます。ただし、かぶせ茶の品質は玉露よりも劣るとされ、高級品にはなりにくい傾向があります。
かぶせ茶は、茶葉が成熟しすぎる前に収穫することが重要で、早摘みが必要となります。また、玉露と同様に栽培品種によっても味わいが異なるため、生産地によってかぶせ茶の風味が異なることがあります。
玉露と煎茶の違い
玉露と煎茶は、お茶の栽培方法によって異なる特徴を持ちます。玉露は茶葉を摘み取る前の一定期間、日光を制限する方法で栽培されます。この遮光期間により、茶葉の中に旨味成分であるアミノ酸が増加し、独特の味わいや香りが生み出されます。また、摘み取った茶葉は手摘みされ、丁寧に揉み込まれることで、とろりとした口当たりとふくよかな甘みとまろやかな味わいが特徴となっています。
一方、煎茶は露天で栽培され、日光を遮ることはありません。茶葉は機械的に摘まれ、揉まれることで程よい渋みと爽やかな香りが出ます。また、煎茶はそのまま飲むことができるため、手軽に楽しめることも特徴です。
玉露と煎茶には、それぞれの栽培方法による異なる特徴がありますが、どちらもお茶の魅力を存分に味わえるお茶として、愛されています。また、玉露と同じく被覆栽培で作られるかぶせ茶には、煎茶と玉露の中間的な味わいがあることも知られています。
玉露の歴史
玉露製法の開発については、幕末頃にさかのぼります。当時、煎茶の製法を始めとする茶業が隆盛を極めていましたが、その中でも特に高級茶として、新しい製法が模索されていました。その中で生まれたのが、玉露製法です。
玉露製法は、抹茶の原料となる碾茶の栽培法である「覆下栽培」と、煎茶製法を組み合わせたもので、茶葉を露地で育てるのではなく、茶樹に直接当たる日光を制限する方法によって栽培されます。この方法により、茶葉に含まれるアミノ酸の量が増加し、旨味や甘味が強く出るとともに、渋みや苦味が少なくまろやかな味わいとなります。
玉露製法の始まりは、1835年に山本山の六代目である山本嘉兵衛(徳翁)が、宇治郷小倉の木下家において茶葉を露のように丸く焙り、その名を「玉露」と名付けたことに始まります。その後、明治初期に製茶業者の辻利右衛門が、現在の棒状に焙る方法を完成させたことで、現在の玉露の製法が確立されました。
玉露製法の発展には、煎茶の製法を始めとする茶業の発展が不可欠であり、その礎を築いたのが1738年に永谷宗円により考案された現在の煎茶に繋がる蒸し製煎茶の製法です。この製法によって、これまで日本で飲まれていた抹茶のような粉末ではなく、急須に茶葉を入れて湯を注ぐだけで成分を抽出できる茶が完成しました。
永谷宗円の煎茶の製法が、玉露製法の開発にも影響を与えたと考えられています。茶業関係者は永谷宗円の業績を讃え、生家に近い神社に「茶宗明神」として祀っています。
そして、永谷宗円による煎茶製法が考案された後、天保時代宇治において緑茶の最高級品としての玉露が開発されました。
玉露の開発者には諸説ある
玉露の創始者には諸説があります。
茶商山本屋の六代目嘉兵衛
一つ目は、1835年に江戸の茶商山本屋の六代目嘉兵衛が、碾茶に用いられていた覆下栽培を煎茶に応用し、玉露の製法を生み出したとされる説です。現在の棒状に焙った玉露へと完成されたのは、明治初期に製茶業者である辻利右衛門(辻利)によって改良されました。
煎茶宗匠の小川可進
二つ目の説としては、煎茶宗匠の小川可進が、宇治の上阪誠一と共に開発したとも言われています。小川可進は、茶道の流派「小川流」を創設し、また、煎茶の製法や美的感覚について多大な業績を残しています。
宇治の松林長兵衛
三つ目の説としては、宇治の松林長兵衛が焙炉場を火事で失い、他家の煎茶焙炉で製造した茶を玉露と名付けたという話もあります。しかし、この説は定かではありません。
木幡村の一ノ瀬
大阪の竹商人の提案で、木幡村の一ノ瀬という人が玉露を開発したというものです。
いずれの説も玉露の開発に関わる人々の功績は大きく、その製法は今もなお受け継がれ、高級緑茶として多くの人々に愛され続けています。
美味しい玉露の淹れ方(入れ方)
玉露は、淹れ方によって味わいが変わってきます。以下は玉露を美味しく淹れる方法の手順です。
準備するもの
急須
茶碗
湯冷まし
茶さじ
手順
- 急須や茶碗、湯冷ましを使ってお湯を温めます。
- 沸騰させたお湯100mlを湯冷ましに入れ、50度〜60度になるまで冷まします。湯冷ましがない場合は、温めた急須からお湯を入れることもできます。
- 急須に茶葉を約10g(茶さじ2杯分)入れます。
- 湯冷ましのお湯を急須に注ぎ、茶葉が5〜6割程度開くまで約2分半待ちます。
- 茶碗に注ぎ、最後の一滴までしぼりきります。急須にお湯が残っていると、二煎目以降の味が落ちてしまいます。
- 独特の香り(覆い香)と濃厚なうま味、甘みを楽しみます。
- 二煎目以降は、お湯の温度を徐々に高くし、浸出時間を短くします。茶葉は二煎目以降も美味しく淹れることができます。
玉露は、味わいの違いを楽しめるお茶です。ぜひ、自分好みの淹れ方を見つけて、美味しい一杯を楽しんでみてください。