京都市内には難読地名が多く、その中には漫画やアニメに出てきそうな不思議な名前がいくつかあります。
1,200年以上の長い歴史を持つ京都は昔の呼び名を現代の読み方にあてはめることがあれば、地名に関係する出来事や人物に由来するといった理由で難読地名が多いのです。
その中でも個人的に一番変わっている地名「天使突抜」「悪王子」についてご紹介します。
「京都市内で変わったスポットを知りたい」
「天使突抜・悪王子について知りたい」
という方におすすめです。ご参考になさってください。
京都で見かける小さな鳥居の意味は?
天使突抜(てんしつきぬけ)とは
京都市下京区堀川五条から東側一帯に存在する町名。
天使突抜に伸びる東中筋通は元々「天使突抜通」と呼ばれる通りでした。
漫画やアニメなどファンタジー作品で出てきそうな名前の地名ですが、しっかりと意味があります。
名前だけ聞けば、天使(エンジェル)に祝福されている西洋のイメージが強いメルヘンチックな通りを想像してしまいますがそうではなく、歴史や物語が含まれた名前なのです。
地名の歴史と由来
京都に大邸宅、聚楽第(じゅらくだい)を構えたとされる豊臣秀吉は九州征伐の後、応仁の乱により荒廃した京都の都市改造を始めました。
その時に多くの寺社仏閣が無理やり移転させられ、現在も残る短冊形の町割りができました。
また、お土居と呼ばれる土塁を建築して上京と下京を囲みこんで、外敵と川の氾濫から市街地を守る堤防の役割もかねて一つの都市にしようとします。
23kmにもおよぶ広範囲を囲うお土居には七口と呼ばれる入り口が設けられました。
鞍馬口や丹波口と呼ばれる地名はその時の名残です。
当時の京都は上京は屋敷が立ち並ぶ富裕層の場所、下京は商業地区であり民衆の街として分かれており、都市整備の一環として上京と下京を結ぶため、大きな通りが新たに作られました。
この通りを「突抜」、その通りがある場所を突抜町と呼ばれていました。
そして、上京と下京間の突破の一つは京都に古くから存在する五條天神宮の境内の森を分断するように通されました。
この五條天神宮は源義経と武蔵坊弁慶が出会った場所として知られていますね。
五條天神宮では薬の神様である少彦名命(スクナヒコノミコト)が祀られており、少彦名命の別名は天子様。
京都の人々に親しまれていた天使社(五條天神宮の別名)の境内に無理やり通りを作ってしまったため、人々は「天使様を突き抜けてまで道を作るのか」と怒り、皮肉を込め天使突抜と名付けられました。
豊臣秀吉の生まれは愛知県、京都とは何のかかわりもないのに、京都を大きく変えてしまったために京都の人々には非常に嫌われていました。
そういった理由で、豊臣秀吉が住んでいた邸宅は京都人の恨みによる破壊で現在では跡形も残っていません。
上京と下京をつなぐ突抜と呼ばれていた名残を今も見ることができます。
上京区には社突抜町、中京区の仁王門突抜町、下京区の突抜町など今でも多数存在しますよ。
そして、現在天使突抜は普通の住宅街となっています。
文字力?インパクトがありますね。
妖精さんの鳥居かしら、なーんて。
京都の街中にこのような小さい鳥居を見かけることがあります。
この天子という言葉は日本では天皇をあらわす言葉とされており、京都の人々は「天子」という言葉を使うことは敬意を払っていないと考えたのか、五條天神宮は「天使様」や「天使社」と呼ばれていました。
昔の五條天神宮(天使社)の敷地はとても広く、その敷地を突き抜けた通りはつまり、「天使社」の敷地を突き抜けて作られた通りということから天使突抜という地名になったとされている。
天使突抜の位置情報
天使突破一丁目
天使突破二丁目
天使突破三丁目
天使突破四丁目
京都駅から天使突抜(てんしつきぬけ)へのアクセス方法
バス
乗車バス停 | 京都駅前(市営50)立命館大学前行 |
下車バス停 | 西洞院松原 |
料金 | 220円 |
所要時間 | 12分 |
バス停西洞院松原から徒歩2分です。
電車
乗車駅 | 地下鉄京都駅(各停国際会館行) |
下車駅 | 地下鉄五条駅 |
料金 | 220円 |
所要時間 | 12分 |
地下鉄五条駅から徒歩10分です。
五條天神宮(天使社)について
五條天神宮には大己貴命(オオナムチノミコト)、少彦名命(スクナヒコノミコト)、天照大神(アマテラスオオミカミ)の三体の神様が祀られています。
桓武天皇の平安遷都の際に、弘法大使に命じて、大和国宇蛇郡から天神様を遷されたのが始まりとされており、当初は天使の宮(天使社)と呼ばれていましたが、後鳥羽上皇の時代五條天神宮と改められました。
当時は洛中で最も古い神社とされており、現在の五條天神宮以上の広大な鎮守の森がある広さを誇っていましたが、火災や戦乱に巻き込まれ縮小してしまいました。
その時の五條天神宮から清水寺まで続く五条大路は平安時代の京都の人々が最も信仰していた観音様と天使様が集まっていた通りとして参拝者でたいへん賑わっていました。
五條天神宮は、薬の神様少彦名命が祀られていることから、医薬とおまじないの神様として京都の人々から親しまれており、今でも節分のころには厄除け祈願するために五條天神宮を訪れる方でにぎわいます。
五條天神宮の詳細情報
拝観時間 | 午前7時~午後6時(不定休) |
拝観料金 | 無料 |
お問い合わせ | 075-351-7021 |
住所 | 〒600-8459 京都府京都市下京区天神前町351 |
ホームページ | なし |
悪王子(あくおうじ)
天使がいれば悪魔もいるということで、天使突抜から五条通をさらに東の烏丸五城の交差点の北側に「悪王子」という町名があります。
そして、さらに北には「元悪王子」という町名も。
なぜこのような名前が付いたのかいろんな想像をしていまいますが、初めて聞いたとき、わたしは悪王子と聞くと八坂神社の境内で見た名前のような。と思い出していました。
八坂神社とも関係がある地名なんです。
「悪」と聞くと、善悪の一つで悪い(わるい)意味が一般的ですが、この悪には「力強い」という意味でも使われていました。
そして、この悪王子とはスサノオノミコトの荒魂のこと。
スサノオノミコトには二つの姿があり、優しい温和な姿と荒々しく行動的な姿のうち、後者を荒魂と呼びます。
悪王子を祀る神社、悪王子社があった場所だから悪王子町と呼ばれており、それ以前に悪王子社があった場所として元悪王子町があります。
現在の悪王子社がどこかというと上記で書きましたが、八坂神社に所縁の深い神様を祀る神社として八坂神社の境内に存在します。
悪王子とは少彦名命(スサノオノミコト)の荒魂で、荒魂を祀る悪王子社があった場所が町名として呼ばれるようになった。現在、悪王子社は八坂神社の境内に構える。
悪王子の位置情報
元悪王子
京都駅から悪王子へのアクセス方法
バス
乗車バス停 | 京都駅前(市営5)岩倉操車場前行 |
下車バス停 | 烏丸五条 |
料金 | 220円 |
所要時間 | 9分 |
バス停烏丸五条から徒歩1分です。
電車
乗車駅 | 地下鉄京都駅(各停国際会館行) |
下車駅 | 地下鉄五条駅 |
料金 | 220円 |
所要時間 | 5分 |
地下鉄烏丸五条駅から徒歩3分です。
おしまいに
京都には天使突抜や悪王子以外にも読み方がわからない難読地名がたくさんあります。
地名に注目すると京都の町を歩くのがさらに楽しくなると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
まめたこ