この記事では、芸妓/舞妓を支えるとされる旦那制度(旦那さん制度)について紹介します。
ここで取り上げているのは、芸妓や舞妓のスポンサーを指します。
旦那とは?
芸妓の世界にはかつてこの旦那という存在が不可欠だったと言われています。芸妓/舞妓が存在する土地には必ず旦那の存在がありました。
旦那はいわゆるパトロンやスポンサーといったような人物です。旦那は親戚のおじさんのようにちょっとしたこと、適度に援助したり協力する程度のものではなく、芸妓(舞妓)一人を見出して「この子に決めた!」となると、ほとんど生涯にわたり金銭面や生活面の世話をする存在でした。
一人前の芸妓(舞妓)となるには、かなりの費用がかかります。旦那という存在は、身に着ける着物や持ち物、装飾品といったものから、生活費まで負担します。
その費用は数百から数千万円と言われており、中には数億円出すという話も珍しくありません。
また、このように多額の費用を負担する旦那は、ある媒体では「旦那は肉体関係込みのパトロンを指します。「旦那」には一般的な婚姻関係ではありません。」と説明されています。
この肉体関係(性行為)については以下の「旦那制度に性行為はあるのか?」で詳しくお伝えしているので、ぜひお読みください。
旦那はお金持ちしかなれない(政治家や実業家)
上記で芸妓(舞妓)のスポンサーやパトロンである旦那となるには、かなりの費用を負担する必要があるとお伝えしました。この費用から誰もが旦那になるわけではありません。
必然的に、その土地の財界人や企業のトップクラスなどポケットマネーから負担できる人物である必要があります。
現在でも、舞妓遊びをする人物は社会的に成功を収めている人物や芸道の家元など限られています。
旦那がつくかどうかは芸妓(舞妓)次第
旦那になれる人物も限られていますが、旦那がつく芸妓(舞妓)も限られています。芸妓(舞妓)に求められるものは美貌や芸など備わっていることが前提で、そのような人物であればある程度歳を重ねても旦那がつく場合があります。
旦那と芸妓(舞妓)の関係:見栄を張る道具?メリットは?
旦那となった人物は芸妓の1番のひいきとなり、面倒を見ることで信頼関係が構築されていきます。芸妓側には生活や芸に関わる費用を負担してもらうといった様々なメリットが存在しますが、通常の家庭を持っている旦那にはどのようなメリットがあるのか?
芸妓(舞妓)と肉体関係が持てるということは考えられるが、そのような話は表には出てきません。旦那の最大のメリットは「男の甲斐性」だと言えます。
「自分はあの芸妓(舞妓)にこんなことをしてやった」「これだけの金を出してやった」ということを周りにアピールできるでしょう。これを粋な計らいというのかわかりませんが、男性はこのようなことを言いたい人もいるでしょう。
芸妓(舞妓)の費用を負担することにのめり過ぎた結果、家庭が破綻して人生がどん底となる旦那もいると聞きます。
現代にも旦那は存在するのか?
現在ではこの旦那はほぼ存在しないと言われています。旦那制度が時代と合わないものであること、そして、不況などの原因で以前のように多額の金額を負担するような人物がいないからとされています。
芸妓(舞妓)にかなりの金額を支払う意味がなくなったと考えている人が多くなったこれからは、ますます芸妓(舞妓)は減っていきそうです。
京都などの大都市には、わずかながら旦那が存在しており、花街を歩いていると旦那と思われる人物を見かけることもあります。
芸妓(舞妓)の意識も変化していると言われており、旦那になると申し込まれた場合も、一般的な生活や結婚を望むことで断る女性も増えていると言われています。
時代の変化により、旦那はほとんど見られなくなったが現在の旦那・旦那制度は存在すると言われています。その旦那・旦那制度について以下で紹介します。
現代の旦那制度
現代では多額の費用を一人で支払える人物が少なくなったため、一人の芸妓(舞妓)に複数の旦那が付き費用を分担するという、昔のご贔屓の様になっています。
ひと昔前の祇園でどれだけの旦那がついているのか数を競ったそうだが、現在はそのようなことはできない状況でしょう。
旦那の苗字を名乗る(花街結婚)
舞妓(芸妓)は、旦那がつくと旦那の苗字を名乗るとされています。(だから、舞妓(芸妓)は、名前だけなのかと少し納得しました。旦那がつくために名前しか存在しないのかと思います。)
旦那がつけば御披露目が行われることもあり、花街では公認の仲となり、花街での疑似恋愛・擬似結婚が楽しめるそうです。
旦那としても普段は一般の家庭があり、花街は別世界として芸妓(舞妓)との関係を楽しめる場所という感じのイメージでしょうか。
〇〇踊りとか衣装代とかご飯とか
芸妓(舞妓)が何かしら発表会がある場合は、使用する衣装代など費用を負担するそうで、それ以外にも食事など芸妓(舞妓)と出かける際はすべての費用を負担する必要があります。
政治家の旦那の芸妓遊び
以前、扇千景大臣の旦那さんも、京都の芸奴と一緒にいるところを写真に撮られたことがありました。政治家の嫁になった芸妓(舞妓)は多数存在しています。下部で紹介しています。
馴染みと水揚げ旦那とは
花柳界(芸者・芸妓(舞妓)が活躍する業界)で「馴染み」「水揚げ旦那」と呼ばれる人たちについて紹介します。
馴染み
馴染みとは芸者(舞妓)の客で、東京では3回通わなければ「馴染み」になることはできませんでした。芸者(芸妓)/舞妓への支払いは直接行われることなく、料亭など「待合」と呼ばれる場所にいる女将を通して提示された金額の支払いが行われていたとされています。
水揚げ旦那
半玉(舞妓)が10代の半ばを過ぎる時期に芸者(芸妓)に以前はなっていました。昔は水揚げと呼ばれるものが一般的に行われていました。
水揚げとは、半玉(舞妓)の処女を売り出し、性体験をさせることであり、旦那候補がいればその人物が水揚げの相手に依頼されます。その人物を「水揚げ旦那」といわれていました。(もし、特定の旦那候補がいない場合は、「馴染み」と呼ばれる人物が水揚げを担当した。)
「水揚げ」とは?
以前の舞妓の間で行われていたもので舞妓が初めての旦那を持つ儀式の事です。当時は半玉(舞妓)の処女を売り出し、性体験をさせる内容のことでした。
過去には、旦那の選択権は芸妓・舞妓には無く、旦那が見初めれば、お茶屋や屋形の女将、男衆が芸妓・舞妓を言いくるめて、強制的に旦那がついていました。
水揚げには大きなお金が動くので、芸妓・舞妓の面倒を見ている置屋は少しでも金払いが良い人物に旦那となってもらうための動きやお願いをしたこともあったそうです。
このような水揚げと呼ばれる人身売買のような行為が行われてきた過去があるため、祇園などの花街では現在でも「身売り」のイメージが残っています。
現在は水揚げが存在されていないとされており、旦那となりたい人物から芸妓・舞妓にオファーがあったとしても、彼女側が「旦那になってほしい」という意志がなければ旦那制度は成立しないと言われています。
今、芸妓・舞妓として働いている女性は旦那が欲しいのではなく、普通の恋愛として考えていることが多いとされており、引退してそのまま結婚することもあります。
ただし、芸妓・舞妓の結婚相手が超年上や大金持ちとなるとやはり「水揚げ」のようなことが行われたのかと疑ってしまう気持ちも出てきます。
旦那のなり方
- 旦那は芸者(芸妓)/舞妓に直接伝えることはなく、待合(料亭)の女将に旦那になりたい意志を伝えます。(芸者(芸妓)/舞妓に直接伝えてはいけないルールが存在します。)
- 女将は旦那になりたいと伝えてきた旦那候補の人物を吟味して、問題なければ芸者(芸妓)/舞妓に旦那の申し出を受け入れるか希望を確認します。
- 芸者(芸妓)/舞妓側が、旦那を受け入れた場合は芸者(芸妓)/舞妓から置屋に旦那について伝え、女将・置屋・旦那の三者で手当て(金額)を取り決めますが、この時に芸者(芸妓)/舞妓本人はその話し合いに加わることはありません。
- 旦那になれば旦那御披露目が行われて、公認の仲なり芸者(芸妓)/舞妓がいる花街では事実婚状態となります。
- 旦那となった場合、他の芸者(芸妓)/舞妓に手を付ける行為は禁止されていたが、花街別に旦那となることは黙認されていたため、戦前は花街別に旦那となり芸者(芸妓)/舞妓を囲っている政治家や実業家が多数存在しました。
旦那が芸者(芸妓)/舞妓に支払う手当て(お金)
旦那から支払われる金額は昭和10年代の新橋だと月に1000円〜300円だったと言われています。(当時の1000円とは総理大臣の月給並みです。)
旦那のお手当て(2000年代前半の情報)
月々のお手当ては最低5、60万~ほどと言われていました。
旦那ができた芸者(芸妓)/舞妓の将来はどうなる?
旦那ができた芸者(芸妓)/舞妓は仕事を続けて芸を極める場合もあり、子育てしながら仕事を続ける人も中にはいました。
旦那が芸妓/舞妓を独占する場合
旦那が芸妓/舞妓を独占する場合は、芸妓/舞妓を落籍させて一般人に戻して結婚したり愛人にすることがあります。
落籍するた目にはかなりの費用がかかり、旦那が財産を失うこともあったといいます。
旦那の別れ話
旦那となっても舞妓(芸妓)が別れることは普通にありました。別れる場合も旦那となる時同様に、待合の女将と置屋に連絡して慰謝料の相談が行われます。(戦後の浅草では手当ての3ヶ月分が相場だったとされています。)
慰謝料の支払いが行われると、離縁したことが公となり、また新しく旦那となることもできました。(また、慰謝料が払えない場合でも離縁となります。)
芸妓/舞妓から離縁を希望する場合は慰謝料は必要ありませんでした。
政治家の妻となった芸妓(舞妓)
- 伊藤博文 – 稲荷町・小梅(伊藤梅子)
- 原敬 – 新橋・原浅 … 新橋の下級芸者の出で美貌でもなく無教養であったが人扱いがうまく、妾を経て正妻となった。
- 板垣退助 – 新橋・小清(板垣清子)… 新橋金春通りの人気芸者だったが身受けされ権妻として入籍。
- 犬養毅 – 犬養千代子 … 元芸妓と言われている。
- 山縣有朋 – 日本橋「吉田屋」大和(吉田貞子)
- 陸奥宗光 – 新橋「柏屋」小鈴(小兼とも。陸奥亮子)
- 木戸孝允 – 京都三本木・幾松(木戸松子)
- 西園寺公望 – 新橋・玉八(小林菊子)
- 桂太郎 – 新橋「近江屋」お鯉 … 妾だが正妻病身を理由に実質的な妻として振る舞った。
旦那制度に性行為はあるのか?
性行為はあるという意見
2022年6月に投稿された元舞妓さんのTwitterでは、未成年と飲酒したのち、混浴を強いられたとありました。
さらに、処女が5000万円で売られそうになったこともあるとの投稿が拡散されています。
実際はどうなのかわかりませんが「一見さんお断り」で限られたお金持ちだけの閉鎖空間では、わたしたちが知るよしもないドロドロした汚い行為が行われているのかもしれませんね。
性行為はないという意見
旦那さんがつくことはありますが、性行為は無いですよ(笑)昔はあったようですが…。そしてある程度の年になった舞妓さんですが、舞妓さんは二十歳前後で”襟かえ”をして芸妓さんになるのが一般的です。ですが、芸妓さんになると舞妓時代のように置屋で面倒を見てもらえなくなるので、売れない舞妓はそこでやめることになるそうです。舞妓を辞めた後の進路ですが…なんか結構いい縁談がくるようですよ。舞妓時代に作法からなんから習得してるので、いいとこからお見合いの打診が。
芸妓になれば、自分の生活は自分で工面しなくてはいけなくなります。その際に金銭面での援助が必要で旦那がつくことがある場合もありますが、その場合芸妓側で意思決定ができます。
性行為自体が目的での旦那制度は存在しないかもしれませんが、自分の生活を面倒見てくれて、経済的に余裕があれば、愛人を囲うように芸妓とも肉体関係を持つ人も少なくないと思います。
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まとめ
今回は、芸妓/舞妓を支えるとされる旦那制度(旦那さん制度)について紹介しました。
普段は触れることがない芸妓・舞妓の世界について、旦那について少しは理解できたのではないでしょうか。
まだまだ触れられないことが数多くありそうですが、芸妓・舞妓について少しでも興味を持っていただけたなら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。